私のいとおしい残念な男達
「…………っ」
掴まれたままの両手がその涙袋に溜まった涙を拭えないでいるから
ただ下唇を噛み締めて堪えて
奴の覗き込まれた眼の前で、熱くなる胸と共に抑えきれない涙が溢れだす
「お前、俺のこと好きだろ?」
俯いたまま、ふるふると首を振る
「嘘だね、泣くほど好きなくせに……」
「…………離して」
両手首が掴まれたまま、奴の唇が触れそうなくらいに近づいて、私の頰を擽る
「嫌だね、ほら答えろ。そしたらずっと一緒にいてやるから」
「…………っ」
「小夏……」
のまれたら、流されたらもう戻れなくなるのに
記憶や気持ちが奴を求めてしまう
押し上げられるように塞がれた唇が、逃げ場のない暗がりの中で熱く流れ込んできた
「………んっ」
息が詰まるくらい深く
思考が何もかもストップされながら、ただ拒否出来ないそのキスに容赦なく侵される
背中に回された黒木の手に引き寄せられるように、私の両手も既に奴の背後に回る
しがみつく様に奴に合わせ口角を変える
次第にゆっくりと離れた唇が今度は頰や耳元に落ちてくる
「俺にしとけ、小夏……もう余所見をするな」
余所見?余所見をするのは黒木の方だ
私だけを見ていてくれる保証は何もない
大学の時の浮気した彼も、私が浮気相手だった総務の江口さんも和馬とだって、
最終的に私は2番目にしかなれなかった
みんなその場の雰囲気に流された結果だったはずなのに