私のいとおしい残念な男達

「ちょっとぉ………」

少し傾いた自分の身体を立て直すように重たい肩を押し返すと、
その肩から伸びた黒木の手がポンッと私の頭に乗った

「な……っ!」

せっかく綺麗に編み込んであった頭をクシャクシャと撫でられ

そのまま顔を覗き込んできた

「なんか言いたい事あるんだろ?」


ああ、私の態度のことか………

「……………っ」

私の頭に乗ったその手を払い退け、覗き込んできた黒木に視線を合わせた


「あのさぁ………上手くいくと思う?」


なんとなく付き合うってことにはなったみたいだけど、
もしかしたらあの暗闇が、あんたにとっては
『吊り橋効果』ってやつで、現実付き合い出したら私はすぐ飽きられるんじゃないかと思う

実際、私の知ってる黒木の歴代の彼女はみんな単発だったし

「付き合ってみなきゃ分からないだろ?
そんなこと」


そんな、化学の実験みたいな………

「………この歳でもう傷つきたくないし」

振られるたぴに段々とダメージが大きくなってそこからなかなか立ち直れなくなっている

だからこれ以上はもう耐えられない


呆れるだろうが、そおゆう事なんた


見上げてた視線をすぐに下に伏せ、膝にあるバックの上でグーにしていた手を更に固く握った


「…………」


黒木から少し小さな溜め息が落ちた


自宅の駅に近づくにつれて、電車内の人も疎らになっていく

肩が触れている距離で、顔を上げられないまま
バッグに置いた私の手が、ふと動いた黒木の手に握り取られた

ん?


手はお互いの座る間に繋がれたまま持っていかれた


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