私のいとおしい残念な男達

「お前は、いつも付き合う前から別れること考えるのか?」



「………違うけど」


黒木が握る私の手に、キュッと力がこもった


「自分で言うのも何だが、お前が思う程俺はいい加減な奴じゃねェぞ」


「うっ………でも、黒木モテるじゃん」


この先いくらでも可愛くて性格のいい子に告られるでしょ………?


「今まで何度か告られて付き合ったが、暫くすると向こうから愛想を尽かされ別れてたし」


「え、向こうから?」


「イメージが違うだの、つまらないだとか、こっちが好きになる前に大概振られる」

振られる?


黒木が?


「確かに、簡単に付き合ってた俺も悪いがな」


「……………っ」

顔を上げた私の手の甲に、さり気なく唇が触れるキスを落とした


振られたなんて聞いた事ない


ただ、別れた彼女が社内の子だったりすると、最低男だと噂されていた事だけ聞いた


黒木から付き合ってた彼女の話なんて聞いた事もなかったし



「ただ、秋山の時は………」

繋がれた手を持ち上げたまま、目を細めこっちを見下ろしてきた黒木


「お前と一緒にいたいと思ったから別れた」


「あ………」

その時、私は和馬と付き合っていた

それでいて、ホテルのベッドで眠る私の横で黒木は

携帯で秋山さんに別れを告げたんだった


「……………」




ほとんど人のいなくなった車両が、静かに自宅のある駅に停車した



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