私のいとおしい残念な男達
すぅっと、息を吸った黒木が、その息を一気に吐いた
溜め息?
そういえば、電車の中での話が途中で途切れたままだったか
『ただ秋山の時は………お前と一緒にいたいと思ったから別れた』
「…………っ」
「小夏」
電車の中でそう言った事をなんとなく思い出しながら、私と指先だけ手を繋いで歩く黒木に呼び止められて、顔を上げた
「ん?」
「浮かれていたのは、俺だけだったのか?」
ぴたりと黒木の脚が止まる
「俺と、まだ付き合えないか?」
真っ直ぐに見つめてそう言ってきた黒木に、心臓が鷲掴みにされたようにキュゥゥっと痛んだ
気持ちがない訳じゃない
寧ろ気持ちはあるし、こうして手を繋いでも嫌じゃない
正直私は黒木が好きだ
「…………っ」
でも、だからいつか別れて会えなくなるのが
嫌なんだ
ずっと好かれてい続ける自信がない
「別れたら一人になっちゃうじゃん」
「別れねぇよ、お前が愛想尽かすまでは」
繋がれた手の指先はゆっくりと絡められ、その手にキュッと力がはいる
「……………私、きっとまた黒木を怒らせたり迷惑かけたりするかもよ」
「付き合ってれば喧嘩だってするだろ」
「それにいつか黒木に私より好きな子ができたら………」
「どこに居るんだよ、そんな奴っ………ってか俺はまだその辺も信用されてないのかよ」
「…………」