私のいとおしい残念な男達

すぅっと、息を吸った黒木が、その息を一気に吐いた


溜め息?

そういえば、電車の中での話が途中で途切れたままだったか

『ただ秋山の時は………お前と一緒にいたいと思ったから別れた』



「…………っ」



「小夏」


電車の中でそう言った事をなんとなく思い出しながら、私と指先だけ手を繋いで歩く黒木に呼び止められて、顔を上げた


「ん?」


「浮かれていたのは、俺だけだったのか?」


ぴたりと黒木の脚が止まる


「俺と、まだ付き合えないか?」

真っ直ぐに見つめてそう言ってきた黒木に、心臓が鷲掴みにされたようにキュゥゥっと痛んだ


気持ちがない訳じゃない
寧ろ気持ちはあるし、こうして手を繋いでも嫌じゃない



正直私は黒木が好きだ



「…………っ」


でも、だからいつか別れて会えなくなるのが
嫌なんだ

ずっと好かれてい続ける自信がない



「別れたら一人になっちゃうじゃん」


「別れねぇよ、お前が愛想尽かすまでは」


繋がれた手の指先はゆっくりと絡められ、その手にキュッと力がはいる

「……………私、きっとまた黒木を怒らせたり迷惑かけたりするかもよ」


「付き合ってれば喧嘩だってするだろ」


「それにいつか黒木に私より好きな子ができたら………」


「どこに居るんだよ、そんな奴っ………ってか俺はまだその辺も信用されてないのかよ」


「…………」


< 329 / 410 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop