私のいとおしい残念な男達

「なんで? 同期だよ、俺たち」


「………………え?」


俺たちって私も?

ってか、この貫禄のあるいかにもエリートリーマン二人ともが同じ入社3年目?

発表の内容からすっごいもんやっちゃってる人達が、同期入社………?

実際同期で入社した人数は200人以上
その内本社ビルだけでも何人いるか…………


「じゃあ私の事は入社当初からご存知だったとか?」


そう訊いた私に、二人顔を合わせ考え込み


「いや、名前を知ったのは今日の発表でかな」

和馬が問い掛けるようにそう言うと黒木が「だな」と、相槌をうつ


「……………」

今日は初めから会場に居たらしく、ほぼ先行だった私の発表から見ていたとの事


もちろん私も最後まで居て、
企画宣伝広報部と第1総括営業部の、それぞれの発表もしっかり見守った


「えっ?本当にあのシリーズ化したCMの原案を出したのっ?!」


まさに新ブランド【la fleur unique(ラ・フルール・ユニック)】の5色ケースの口紅のそれぞれのCM

去年から何度もパターンを変えてシリーズ化している

黒木とかいうこの男がそれに携わっているとは…………


デートの支度中に恋人が迎えに来て、
「まだ、ちょっと待っててね」と少しだけ玄関の扉を開ける。
その時、扉の隙間からみえる彼女が唇に人差し指を立てる

決してその女優さんが誰なのか解らないまま次のバージョンに変わる

化粧をする仕草も、恋人とのデートシーンもハッキリと顔を映さない

でも、透明感のある肌や潤った唇、明るい表情なんかが何故か自然に見えてきて


それがたぶん、人によっては10代だったり40代だったりと見えてしまうのだろう


< 33 / 410 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop