私のいとおしい残念な男達

「…………」


「てっ…………」

頭のてっぺんに黒木の軽いチョップが落ちた


「別に気にしねぇよ、いちいち和馬の話し出した途端に黙るな小夏」

「………は、だって」


また身体をスッポリ抱き込まれて、頭をヨシヨシとなでられた


「比べたきゃ比べればいいだろ、あいつがそうゆう事に完璧なのは知ってるし………」

…………う、確かに

「でも………」

「違う人間だ、同じ事は出来ないってのはお前も分かってるだろ?俺だぞ、だから和馬と比べられたって構わない」

そう言うの、黒木らしいちゃあらしい
黒木の胸の中でコクコクと頭を下げた


「お前の元カレで俺の親友だから、無理に気づかったら思い出話もできないだろ?」

ん?

ちょっと頭を傾げたけど


「完璧に好きを忘れるのは難しいしな………」

聞き取れないくらい小さくボソッと呟いた


ポンポンと頭を小突かれたので顔を上げると、額に軽いキスが落ちた

「…………っ」

不意打ちに、身体を離すとすぐに黒木の口元は私の耳もとに


「挨拶はいつかなっ」


なんか、ちょいちょいこの歳の気持ちをムズムズさせてるぞ、黒木よ

親に挨拶って意味分かってるのか?




いい加減最終電車がなくなる前に帰らなきゃいけない事は分かっているのか、
名残惜しそうに身体を離した


「小夏」

「ん?」


「ボチボチでいいから、ボチボチで」


ボチボチ………?

「………ね、もう遅れるよ黒木」

最後の指先が離れて背中を見せると、急いで駅に戻って行った



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