私のいとおしい残念な男達

「じゃあ、俺はこれで………」

本来は用事のない部署だから、早々に立ち去ろうとしたら、すれ違いにガツッと腕を掴まれた


ん?


「そう言えば、阿部君結婚したんだってね」


桐生さんに足を止められ、そう声を掛けられた


「え?あ、はい………」


「向こうに行った後でお祝いも言えなかったね、おめでとう」

暖かいその引き込まれるような笑顔で言われると、思わず綻んでしてしまう


「そ、そんなありがとうございます」


「今回は急遽こっちに帰って来たからこんな物しかないけど………」


ごそごそと、持っていた紙袋から小さな小箱を取り出した

「えっ?」

「それでも久しぶりにこっちに顔を出すものだから、挨拶代わりのつもりで買ってきたものだけど………」


こ、これは………!!


表通りに出来た有名チョコレート専門店の包み
しかも、秋の新作チョコレート!!


「い、い、いいんですか?!頂いてもっ!」

「もちろん、みんなに配る為に買ってきたから
好きだった?チョコレート」

なんていい人なんだぁ


「はいっ、大好きですっ!」

甘い物には奥さん共に目がないんだよなぁ〜


「阿部君、波留の下についてて大変だろ?忙しくて」

「ああ〜〜いえ、まぁ………」


そんな事はないです、っとは言えないかな

「新婚なのに残業続きで、休日出勤なんかもしてるの?」


「ええ、まぁ、黒木さん妥協とかしない人ですから」

頭を掻きながら、話の流れで思わずハハッと本音をもらしてしまう

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