私のいとおしい残念な男達


「今日デートですよね、黒木さんと」


「………モモちゃん、集計のデータ11時までに2課へって言われてたよね」

ニッコリと笑顔で仕事へと引き戻そうとそう促すが

「もうあと、持ってくだけでぇす」

本当に貴女は優秀で、助かります………





PM6:00 [珈琲水風温]



もう? それともまだ?

あれから一年になるんだなぁ………

今年は、去年と違って寒くなるのが緩やかで、風のない小雨の降る日が多い季節の変わり目だ


「何みてるの?」


窓際のカウンター席から見えるのは、天気予報通りの小雨を避けて、駅から往来する人たち


「早かったんだね」


遅れてくるだろうと思って、小腹を満たすためにカフェオレと一緒にスコーンを注文したのに


「昨日こっちに来てすぐに対処の業務に入ったからね、今日はもうそんなにやる事はなかったんだ」


一年前と変わらない声のトーンで、ホットコーヒーを持って隣に座る和馬


普通なら一年で元カレとこんな風にお茶するのってどうかと思うけど………

しかも彼氏が出来たっていうのに

「………会ってくれるとは思わなかった」

さり気なくそんな風に言いながら、
相変わらず熱さを気にしてコーヒーを口に含む


「明日、もう向こうに帰るの?」


「そう、明日昼の便でね。忙しいだろ?」

変わらない笑顔
でも、少し日焼けしたかな?


< 346 / 410 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop