私のいとおしい残念な男達
          ** 黒木side **


さすがに週末は混んでるな

もし、3人で来ていたらカウンター席になんか座らないから、もう少し待たされただろう


「とりあえず乾杯だね」


「乾杯?お前に?」

和馬から差し出されたビールに、仕方なくビールジョッキを重ねた


「波留と小夏に」


「……………」


高校時代からの付き合いで、和馬の事はちゃんと知っているつもりだ

そのとって着けたような笑顔は、感情を隠している証拠だ


「なぁ、和馬」

「ん?」


「お前、今回なんで帰ってきたんだ?」


「…………」



阿部から和馬の事を聞いたのは、実際今日の朝だった

実際会社での業務はわざわざ海外からくるほどの作業ではなかったと聞いた
もちろん和馬にかかれば一番早い問題解決だったらしいが………

俺には和馬からの連絡がないまま、小夏から朝和馬からきた社内メールの事を聞いた




「元カノに、
それもなんで社内メールなんか………」

和馬に、小夏を『元カノ』なんて言い方はしたくないが


「だって、もう俺の登録携帯から消してるかもしれないだろ?」

それを、『今カレ』の俺に対して言うか?


「だったら俺に電話してきたらいいだろっ?」


「…………」


一旦顔を逸らした和馬が、振り向くようにこっちを見て、目を細めた


「そしたらきっと小夏とは会えないだろ?」

「…………っ」


一年前、確かに俺の目の前でお前が小夏を振ったんじゃねぇか

それなのに、なんでわざわさ小夏に会うんだ?


「小夏に何か用事だったのか?」


「別に………」


「向こうで何かあったのか?」


聞いても黙ったまま、口を暫く閉ざした和馬に、諦めて一杯目のビールを飲み干した


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