私のいとおしい残念な男達

どう見ても真面目に言ってるとは思えない


「いつの話をしてんだよっ」

人の反応を見て楽しんでやがるのは分かってるのに、どうしようもなく気分が沈む


「冗談だよ、ちょっと言ってみたかっただけだから」

そう言いながらジョッキに口をつけて平然としている

「…………」


「波留?」



「お前もしかして別れた事後悔してるのか?」

とても穏やかじゃいられない


「いや、してないよ」

軽く首を振った和馬にどうしても疑いの目を向けてしまう

じゃあなんだよ、本当に冗談なのか………?




目の前で同じビールを飲みながら、前なら大概仕事の話で盛り上がるのに、今の俺はまるで和馬からの話題に身構えてさえいる状態だ

自分に余裕がないせいなのか?


「なぁ、波留はどうして小夏だったんだ?」


「は?」


「一度聞いて見たかったんだ、波留と小夏の出会いって、あの社内発表会じゃないんだろ?」


どんな興味本意だ? 今更そんな昔の事を

「ああ……」




確かに、小夏と初めて出会ったのはもっと前だったか、
で、あの社内発表会で小夏を見つけるまで
『その事』は少し忘れていた


確かあれは、入社1年目の冬だったか………


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