私のいとおしい残念な男達


「その事で波留に言われたよ、小夏と二人っきりなろうとするなって」


『黒木が?でも、たぶん黒木は和馬と話したかったと思うよ。連絡なくて寂しそうだったし』


「…………ん?」


『だから、妬きもちでしょ?和馬が私にだけメールしてきたから………』


いやいや、妬きもちは小夏に対してだろう


………でも、小夏はそう思うんだな、ったく
ちゃんと付き合ってる自覚はあるんだろうか?




電話口から少し離れてフッと含み笑いをした



『黒木とちゃんと話せた?』


「……………ん」



『よかったぁ』


向こう側から聞こえてくる小夏の声に、自分でも信じられないほど気持ちが落ち着く


たぶん、彼女と付き合ったのはこんな気持ちからだろう


明るすぎて見えない星が綺麗だと空を仰ぐ彼女が、「見えるよ私には」と言った


そんな女の子だったっけ………


1年前の身勝手に傷つけた俺を許してくれるなんて虫のいい事じゃないはずなのに


「波留のおかげか………」


『何?』

息を吐くように言ったが、彼女には聞き取れなかったみたいだ

「いや、今日悪かったと思ってさ。デートだったんだよね、波留と」


『…………っ、別にそんなの』


電話口の向こう側で言いにくそうに口ごもる


『いつだって出来るから』


いつでもか、確かにな
小夏なりに俺に気を使ってくれた訳だ………


自分で1年前に二人をそう仕向けたはずなのに

どこかでまだそのままだったら、
なんて考えていたり………

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