私のいとおしい残念な男達
声の方に顔を向けると、呆れた顔した桐生君がいた
「うん…………さっき今日は母親が出掛けてるって弟から電話があったんだぁ」
嘘じゃない、これは本当のことだ
実際には、それで父親と弟でコンビニか食べに行くからと言う報告だけだったけど
電話があったのは飲みに来る前だし
「ふぅん………じゃあ帰ろう」
「へっ?」
そのまま手を引っ張り捕られ、二人で席に戻った
「波瑠斗っ、悪いが小夏が帰りたいらしいから俺が送って行くな」
そう言った桐生君と手を繋いだまま、荷物を持ってその居酒屋を出た
えっ、はぁっ?確かに帰るとは言ったけど
いや、それより今『小夏』って………?!
黒木たちの面食らった顔を思い出したのか、クックッと含み笑いをしながら横を歩く桐生君を見上げた
「桐生君まで帰らなくても、まだ電車あるし」
「小夏が話に入れなくてつまらなそうにしてるから。自分でわからないみたいだけど顔が赤いよ。ひとりでペース上げて飲んでたでしょ」
金曜日の夜
繁華街から少し離れているいつもの洋風居酒屋を出て、二人でタクシーが捕まるまで手を繋いだまま歩いた
確かにちょっとフワフワしてる
「星空がキレ~っ!」
酔ってるからかな? なんだか心地いい
「星なんか見えないのに?」
「見えるよ私には」
そう言いながらフフフッと頬が上がる
「機嫌なおった?」