私のいとおしい残念な男達
「あ、ごめっ」
少し、ほんの少し当たっただけのような気がしたんだけど、
顔を片手で覆い痛がる黒木に近づくと、左の手首を掴まれた
「お前、爪が長いだろうっ」
ネイルも付けていない爪は、深爪で伸ばすのが嫌いだかしそれに、当たったのは確かに手の甲だったはず
ふるふると掴まれた手を白色の湯から目の前に晒されると
「…………え?」
私の手を挟んで、黒木がニヤリと頰を上げた
掴まれた左手の薬指にピッタリと嵌るプラチナの指輪
よく見ると、ピンク色の石がウェーブ状に埋め込まれたデザインリング
「………っ!?」
口を開けても声が出ないまま、ピンッと伸ばした自分の手の指と黒木に何度も交互に視線を向ける
「嬉しい、ありがとう波留登♡
大切にするぅ〜〜………だろ、小夏」
いつまでも声を出さない私に痺れを切らし、そう言って顔を突き合わせてきた
コクコクと頭を下げて同じ言葉をと喉元に力を入れる
「くろぉ……っ」
「は〜る〜と、いい加減俺も名前で呼べよっ
和馬との差が縮まらないだろっ」
「今、そこじゃないぃ〜っ」
いつまでずっと不安で考え込んでいたんだろう
こいつと付き合うと決めた時から、どうしても頭から離れない歴代の彼女らや、黒木に好意を持つ人へのどうしようもない嫉妬心を
今までの失敗した私の恋愛観が、確かに
それを悶々と燻らせていた
「…………っ」