私のいとおしい残念な男達
あの居心地の悪かった居酒屋から連れ出してくれて、気分よく手を引かれて歩いて、ネオン街を走るタクシーで心地良く肩を貸してくれている
「なぁ、やっぱり俺たち付き合ってみない?」
「え……?」
「それともやっぱり波瑠登のがいい?」
視線を上げれば、すぐ近くにある優しい瞳をした顔
「なんで黒木っ?」
「だって俺が『桐生君』で、あいつが『黒木』って呼び捨てでしょ?」
別にそんなこと…………ただ何となく黒木は一緒にいると案外分かりやすくて、それにあっちも口が悪いからつい……
それに桐生君ってなんか落ち着いていて年上っぽいから
「あ、じゃぁ………きりゅう?」
「和馬がいいな」
「ええ…………っ」
「…………ね、小夏」
タクシーの無線が、私と桐生君との会話の間を埋めるように、ガサガサと無機質な音と聞き取れない声を発している
「………………」
でも暗闇のタクシーの中、その沈黙が彼との距離を縮め、ゆっくりと触れるだけのキスが落ちてきた
タクシーの運転手さんだって、私たちの会話を聴いていたに違いない。
黙ったまま後部座席をチラリとバックミラーで見ていただろうに…………
私はまたその雰囲気とお酒のせいで、しっかり流されていた