私のいとおしい残念な男達
一旦弟に、いつもの人当たりのいい笑顔を向けた和馬は、もう一度父に視線を戻し
「では、失礼します」と再度頭を下げた
タクシーに乗り込んだ和馬に、私は手を振って見送った
あ"あ"…………今、家に入りたくない
一足先に家に入った弟がまさに待ち構えていた
「姉ちゃん何? 彼氏出来たんだぁ」
「……………煩いなぁ、私だって付き合ってる人くらいいるわよっ」
そう言って、さっさと自分の部屋へ行った
後から弟が母親に報告したのか、興津々で和馬の話題を振ってきた
次の日、すぐに経理部のあの二人に食堂へ呼び出され問い詰められた
大体、勝手に席に割り込んできて「酷いっ」なんてお門違いも甚だしい
私たちが帰って、不機嫌MAXになった黒木もすぐに帰られ、二人取り残されたらしい
たぶん、和馬もそれは分かっていたんだと思う
「悪いけど俺、小夏と付き合いだしたから」
食堂で二人に攻められる私の肩を、グイッと後ろから引き寄せ現れた和馬にそう宣言された
面食らっていたのは、目の前の二人だけじゃなく、和馬の隣にいた黒木まで驚いていた
「そう言う事だから、これからあまり邪魔しないでね」
相変わらず柔らかい優しい笑顔で、彼女たちからそのまま私を連れ出してくれた
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