私のいとおしい残念な男達
私はフッと小さく息をついた
「噂のことはつい最近知ったんだ。どうも本人に隠れて面白く噂が流されてたみたいだね。実際、小夏はどんな風に聞いてる?」
…………日々淡々と噂はエスカレートしてますよ
「とりあえず、既に私は秒読みらしいわ」
「秒読み?」
「常務のお嬢さんとの結婚話が先攻してて、私が振られるのが後回しにされてるみたい」
カウンターに肘をつき頬杖をついた
本当はもっとえげつない言い方していることもあったりするけど、それは敢えて和馬には言わない
偶然休憩室から聞こえた男性社員たちの談話
『俺だったら、輸入物と国産だったらやっぱり質のいい国産だよなぁ。しかも血統書付きだぜ、将来役職付きってか』
牛肉みたいだな、おいっ………
私の輸入事業部に引っ掻けて言われてるんだろうが、なかなか上手いこと言う
だが、言っとくが私だって国産だ。あっちの方が質がいいのは否定しないが…………
まあ、それくらいならかわいい言い方だが
『上層階エリートに棄てられた輸入物って、寝かせて慰めたら思いのほか旨かったりしてなっ』
イヤらしい笑いと共にゾッとするようなセクハラ発言を周りを気にせず続けて話す男性社員
『あいつ、いい身体してるしなぁ……』
話の軍団をそっと覗いてみれば、その中には同じ部署のあの井ノ上もいた
いつお前にあいつ呼ばわりされてんだ?!
兎に角、その内『別れたらしい』なんて言われるのも時間の問題だろう
「勝手なこと言うな、本当に噂ってやつは……」
和馬も呆れてそう言うが、元々火のないとこには煙もたたないだろう………