ただ、好きなだけだった。



「嫌…嫌……」


「何が嫌なの!!?帰るって決めたでしょ!!!??」



「姉ちゃんにはわからない!あの家で1人の私の気持ち…。……っ…幸せなあんたなんかにわかるはずがないっ!」



「紗由には私がいるって何回言えばわかるのよっ…!」



私の傷は大きすぎた。



もはや私の傷は……
姉ちゃんなんかじゃ埋められない。



あの家での傷は……
人々が考えるよりもはるかに大きい。



恨み、憎しみ、虐待、言葉の暴力、罵り、罵声……



実の母親から様々な傷を与えられてきた私、



体の傷は…1週間もたてば消えた。


大きな傷でも、いつかは消えた。




でも………


心の傷は消えなかった。





母親から受けた多くの傷が、



まだ心に住み着いている。




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