あの日、あの場所で-君に恋した夏の日-

大抵は、後になってから、気付くもの。

いつか、全てが愛おしく押し寄せるだろう。

――たとえ今は、思い出にできなくとも。

「ママ、ご本読んで!」

そんなわが子の声で、ふと我に返る。

「――ありがとう。…お元気ですか?」

しみじみと口にした女性は、

見ていた卒業アルバムを、元の位置に入れ直した。
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