あの日、あの場所で-君に恋した夏の日-

「あるところに、

ダメなサンタが居たんじゃ。

――サンタ界にも掟があっての、

…その一に、死んでしまったものに命を与えることは、原則として

禁止されておる。

ところが、彼はあるクリスマス・イヴの日、どこかここから遠い国で

死んでしまったはずの少年に、もう一度生きるチャンスを与えてしまった。

『サンタさん、ぼく、…まだこのせかいのことなにもしらないまま

どこかへいくなんて、いやだよ。』

『お前さんは、生きたいか?』

『"いきる"って、なに?』

…そうしてサンタ界をクビになったダメなサンタは、

――今頃どうしちょるんじゃろうな。」

彼は話しきると、意味深な笑みを美唄に向けていた。
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