消せない想い
いつものこと
1
マンションのエントランスで、お隣の後藤さんに会った。
「おかえりなさい、舞桜ちゃん」
「あ…こんばんは」
おかえりなさい、に返すうまい言葉がわからなくて、何だかとんちんかんな会話になってしまった。
「どう?学校は」
郵便受けからチラシを取り出してエレベーターに向かうと、待っていたのか後藤さんが前にいた。
「えーっと、」
首をかしげて促すように微笑まれる。
「楽しいです」
って!こんなのまるでバカみたいじゃん、わたし!
「あら、そう。楽しいなら良かったわ」
後藤さんは笑顔でそう言ってくれた。