消せない想い
後藤さんはわたしがここに引っ越してきてから、何かと世話を焼いてくれる。
おせっかいとかじゃなくて、なんだか…本当のお母さんのように。
「はい」
五階につくと、後藤さんはボタンを押してどうぞ、という手振りをした。
「ありがとうございます」
わたしが家の前で鍵を探して鞄をごそごそさせていると、そうだ!と後ろで声があがった。
「舞桜ちゃん、今日のご飯ある?」
突然のその質問に少し戸惑いながらも、
「えーっと…今日はこれから作ろうかと」
と素直に答える。
昨日のご飯は全部食べちゃったし。
今日はパスタでも作ろうかな…確か買ってたはず。
「そうなの」
その言葉に頷くと、
「じゃあ家で食べてかない?」
優しい笑顔でそう言ってくれた。