哭く花
先生の後ろを黙ったまま付いていくと、
屋上に登る、人気のない階段の手前で先生は止まった。
「っわあ」
俯きながらついて行った私は先生の背中にぶつかって止まった。
「美岬、」
先生が振り返る。と思うと、力強い腕が私を包んだ。
暖かい熱が、私を纏う。
「せ、せんせ」
「心配しないで。平気」
先生は優しい声で、耳元につぶやく。
「せ、せんせ、私は平気です!!」
「そ、そう?」
抵抗する私から、やっと腕を離した先生。
誰かに見つかったら、まずい。
その思いだけが胸を巡っていた。
先生は恥ずかしそうに頭をかいて、
「朝から顔色悪そうだったから、、」
何も無いなら大丈夫だな、と、軽く頭を撫でると、
気を付けて帰れよ、と職員室の方へ行ってしまった。
残された私の体からは、真夏のはずなのに
ひんやりと熱が抜けていった。