哭く花


先生の車は白の8人乗りで、

普段、人なんか乗ってなさそうなくらいの
新車の匂いがした。

先生が後ろのドアを開けてくれたため、

「お邪魔します」

とだけ言って、助手席の後ろ側に腰掛けた。

先生はドアを優しく締めると

運転席側に駆け寄ってドアを開け、

さっきとは違い荒々しくそれを締めた。

慣れた手つきで鍵を挿し、
空いた片手でシートベルトをしめる姿が

どことなく別人のようだった。

じゃあ出すよ、と言うと、

走り出したのかわからないくらいに優しい運転をしてくれた。

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