哭く花
川と化した街の、高台にかかる橋を
先生の車が穏やかに走り抜ける。
私の家は、小高い丘の上にあり、
普通流されるなんて考えられないような場所でもある。
だからそこに家を建てた訳で。
沢山の人が道の脇を長靴と傘で通りゆく。
私は静かに外を見ながら、ただ川の音を聞いていた。
先生も、最初はつけていたラジオを消して、
窓を開け、運転してくれた。
窓から抜ける風は、やけに冷たかった。
2時間ほど川より少し高い道を走ると、
静鳴を抜けて、街へと景色は変わっていた。
中心となる街でも、雨の後は人通りが少なく、
やけに悲しく、歩行者信号の音が響いていた。