哭く花
小高い丘の上。
庭から見えるのは、綺麗な青い海と、
水平線の向こう側の知らない街。
白く磨かれた洗濯物が風でたなびいて頬をくすぐる。
「美岬、風邪ひくよ」
ゆるく巻いた茶色の髪をなびかせて、
こっちを見て微笑む、大好きなお母さん。
そんなお母さんの指を握る、まだ小さい弟。
「ただいま、」
身長が高くて、かっこいい、自慢のお父さん。
私の大切な大切な、3人の家族。
これからも笑って、一緒に生きていたいな
「ついたよ、美岬さん」
エンジンが静かに止まった時、
目の前には大きな、
見たこともない病院が、
ずっしりと重く建っていた。
夢、だった
朝見たばかりの家族の顔を忘れそうで、
怖くてもう一度目を閉じた。