哭く花
私は頑なに自分の中で、

この病室を去るためのドアを

開けることを拒んだ。

もう会えない。大好きな、愛する家族に。

お父さんは、仕事であまりおうちにはいなかったけれど

いる時はずっと私たち姉弟の相手をしてくれて。

朝と寝る前、抱きしめてくれる腕は力強く大きかった。


お母さんは毎日毎日、1人で姉弟の世話をして、

手のかかる2人を前にしても笑顔が絶えず、

芯は強くて、とても優しかった。

弟は、私のことがとっても大好きな、

まだ小さな3歳の男の子だった。

顔を見るといつも、みーちゃん、と

名前を呼んで駆け寄ってくれる。

小さくて、壊れてしまいそうな背中を

追いかけるのがわたしはとても好きだった。

捕まえた時に感じるぬくもりは、

お父さんやお母さんよりも大きかった。

そんなふうに生まれてから今までのことを振り返っていると、

また涙が止まらなくなる。

そんなことを繰り返しながら、

私は二度とあえなくなる三人の顔を目に焼き付けた。



< 31 / 133 >

この作品をシェア

pagetop