哭く花
丘をしばらく登ると、白い校舎が見えてきた。
いくよ、と夢ちゃんが一気に坂を駆け抜ける。
待って、の声も虚しく、
夢ちゃんはお気に入りの先生の元へと走り寄る。
この学校は生徒が少ない分、
先生もみんなの顔を覚えていて、
比較的どこの学校よりも
先生と生徒の仲の良さに定評がある。
「最上せーんせ!」
夢ちゃんのお気に入り、最上隼人先生。
昨年来たばかりの、まだ若い、体育科の先生。
凛々しい顔つきで、他の子にもとても人気がある。
「おっ、しい、元気だったか?」
ハンドボール部の顧問でもあるため、
夢ちゃんは特別、最上先生と仲がいい。
私はというと、特別な先生なんていない。
頭がいいわけでもなく、部活もしていない。
少し寂しくなるけれど、これくらいが丁度いいのだ。
「志賀も、おはよう」
最上先生は夢ちゃんの向こう側から、
私にも笑顔を向けて手を振ってくれた。
「おはようございます、、」
やっと丘を登りきった私は、
切れた息で最上先生に挨拶を返す。
「志賀もうすこし体力つけろよ〜!」
先生が笑うと夢ちゃんも笑う
みんなが笑顔で、笑い合う、そんな幸せな朝。