哭く花
「昔っから仲のいい2人だった」
そのふたりがどのふたりを指しているか、私にはすぐはわからなかった。
「先生と、笑満と、康介と、小野山は、高校時代から、ずっと共に過ごしてきたんだ」
笑満、康介。
それはお母さんとお父さんの名前だった。
「当時から4人の中でも笑満と康介は仲が良くて、俺と小野山で、二人が結ばれるよう促したんだ。」
そして、と先生の話は続いた。
暗い部屋の空気も、気にならないくらい、
その話はまっすぐと私の耳へと届いた。
「そして、4人で卒業の時に、タイムカプセルを埋めることになって、それぞれがほかの3人に向けた手紙を書いて、近くの公園に埋めた。」
「大学も卒業して、大人になって。また4人で集まって呑んでいた時だ。小野山がタイムカプセルの話をし始めた。」
「そしてそのまま店を出てカプセルを掘り起こし、家に帰ってから読むという約束で解散したんだ。」
先生はぽつりぽつりと、でもしっかりと言葉を私に届けてくれる。
「手紙には、くだらないことが多く書いてあった。所詮、高校生のノリだ。小野山のなんか最悪だったよ」
先生が私をみて微笑むと、私も自然と笑みがこぼれた。
小野山さんはぶつぶつと文句を言っていたけれど。
「でも康介だけは違った。まるで自分の未来を知っているかのような手紙を書いていたんだ。」