哭く花
先生は丁度洗面台の片付けをしながら、
湯船にお湯を張っていた。
ドアを開けっぱなしにしていたので、湯気が洗面台まで溢れていた。
「わわっ、湯気が」
湯気は思ったよりも濃くて、
先生の顔が認識できないほどだった。
「どうした?上、終わった?」
湯気の向こうから現れた先生の手が、優しく背中に触れる。
「あっうん、なにか手伝えることないかなって」
手の触れた背中が熱い。
だんだんと汗ばんでくるのが自分でもわかった。
「美岬、汗かいてないか?風呂湧いてるから入ってどうぞ」
「先生は?後で入るの?」
「そうだなあ、まだ片付けもあるし。」
既に大きな湯船にはいっぱいにお湯が溜まっていた。
「じゃあ冷めちゃう前にお先に失礼します」
「どうぞどうぞ」
なんて妙に堅苦しい挨拶を交わして、
2人でへへっと笑うと、
私たちはまたそれぞれにやらなければいけないことに取り掛かった。