哭く花
あまりの美しさと、花の多さに声が出ない。
「先生がずっとずっと、育ててきたんだ。」
先生は私に、どうぞ、と中へと案内した。
バラ、ヒマワリ、サルビア、ラベンダー
とても一つの季節で咲く量じゃない花が、
そこには盛大に並んでいた。
そのなかに、私はアジサイの花を見つけた。
ああ、お母さんと植えたんだっけ。
「アジサイがどうした?」
近寄ってくる先生に、
「お母さんと植えたんだ、懐かしくって思い出しちゃった」
とだけ伝えると、
静かに花に触れた。
先生は私の横に来てしゃがむと、
同じように花に触れながら言った。
「これも、笑満と植えたんだ」
先生は愛おしそうに花に触れた。
その横顔は私が見たことないほどに甘く温かくて、
きっと先生は、
お母さんのことが、好きだったんだ
子供の私でも、それくらいわかった。