哭く花

「せんせ…」

「アジサイはね」

先生は私の話を初めて遮った。

きっと私の言わんとすることがよくわかったんだと思う。

「pHによって色を変えるんだ」

「pH?」

「つまり酸性か、アルカリ性かでね、」

酸性では青、アルカリ性では赤の花が咲く。

ここの土は酸性だからね、綺麗な青だ。

先生はほぼ独り言のようにそれだけ言うと、

すっと立ち上がり、別の花のところへと向かっていった。

私の問いはすっと花の香りに消えていく。


でも聞かなくて、良かったんだ。

そう言い聞かせて、遠ざかる先生の背中を見つめた。



< 75 / 133 >

この作品をシェア

pagetop