哭く花
「いらっしゃい」
先生は、私が中へ入ったのに気がつくと、鼻歌をやめ、
浸かっていた浴槽に浅く座りなおした。
言葉にはしないものの、
それは私に、入ってどうぞ、と示していた。
浴槽に歩み寄る度に心地よいミントの香りが鼻を抜ける。
浴槽に浅く座る先生は、腰にタオルを巻いていた。
私は少し躊躇いながらも、体を軽く洗って、
先生の待つ浴槽の中に体をつけた。
沸かしてから随分と時間の経っていたお湯は
少し寒いほどにぬるくなっていた。