哭く花


「いらっしゃい」

先生は、私が中へ入ったのに気がつくと、鼻歌をやめ、

浸かっていた浴槽に浅く座りなおした。

言葉にはしないものの、

それは私に、入ってどうぞ、と示していた。

浴槽に歩み寄る度に心地よいミントの香りが鼻を抜ける。

浴槽に浅く座る先生は、腰にタオルを巻いていた。

私は少し躊躇いながらも、体を軽く洗って、

先生の待つ浴槽の中に体をつけた。

沸かしてから随分と時間の経っていたお湯は

少し寒いほどにぬるくなっていた。
< 91 / 133 >

この作品をシェア

pagetop