哭く花

静かな室内に、水音だけが響く。

「おっ、お湯冷たくない?沸かしなおそうか?」

背中側に先生の温かみがあるのが少し照れくさくて、

落ち着かない私。

「ああ、お願い」

余裕のある先生は、湯気で湿った髪をかきあげていた。

私は手を伸ばすと、少しだけ新しいお湯を追加して、追い焚きボタンをおした。

私の心臓はそのあいだも、

のぼせた訳でもないのに忙しく動いていて、

また後ろで鼻歌を歌ってる先生の余裕が羨ましい。

きっと、いろんな人とこういうことしてるんだろうな

少しだけ心が曇った。



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