哭く花

暫くの間、広い浴室には先生の鼻歌だけが響いた。

私は鼻歌を背に、さっきの先生の言葉を頭の中で反芻していた。

思えば、悲しいだとか辛いだとか、

あまり先生にきちんと伝えたことは無かった。

ぼうっと考える間も、

私の頭はミントの香りで冴えながらも、心は穏やかさを増していた。

「…先生」

「んー?」

鼻歌をやめた先生が、のんびりとした声で答える。

「そっちへ行ってもいいですか…?」
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