哭く花
困惑
ほんのりと涼しげな風が吹いていた7月も終わり、
本格的な夏がやって来た。
先生と暮らしはじめて、ちょうど1ヶ月。
私達はいつもと変わらない朝を迎えていた。
「おはよ、、」
「おはようございます」
スウェットを着た寝癖頭の先生が、
目を擦りながらリビングに降りてきた。
その姿はまるで、いつかの弟と同じようで、毎朝笑みがこぼれる。
私はいつものように、
早起きをして、朝食と弁当を作り、食後のコーヒーのために豆を挽いていた。
このあとは、先生と朝ごはんを食べたら、コーヒーを淹れつつ学校へ行く支度を始める。
これがいつもの流れ。
今日もいつものようにあたたかい朝ごはんを食べ始めた。
「美岬」
まだ眠そうな先生が、お味噌汁の湯気越しに私の名を呼ぶ。
「はい、」
「美岬に会わせたい人がいる」
「いつですか、?」
「今夜から、1ヶ月ほど泊まりに来るそうだ」
「…へ?」
先生はごめんな、と苦笑した。
「泊まり、ですか?」
「ああ、また来てから説明するからね」
心配するな、といわんばかりに穏やかに笑った先生は
「コーヒー濃いめに淹れてほしい」
と私に頼むと、食べ終わった食器を片付け、着替えに行ってしまった。