哭く花
私はぼーっとしたまま頼まれたように
濃いめのコーヒーを淹れ、
リビングのテーブルに置いた。
先生はパタパタと忙しそうに駆け回って身支度をしていた。
私も自分のコーヒーに角砂糖を一つ添えて、
制服を取りにクローゼットへと歩みを進めた。
クローゼットでは先生が着替え終わった頃で、
ピンクのシャツと、赤いネクタイが逞しい胸板にマッチしていた。
先生のスーツ姿はいつも芸術ものだ。
ドアを閉め終わったあとで階段に立つ私に気がついた先生は
「長く使っててごめんな、」
というと、階段を早足で下っていった。