記憶の中の彼
さらにわたしは見たのだ。
彼はわたしの顔を見たとき、一瞬顔に動揺が走っていた。
すぐにもとのポーカーフェースへと戻ったが、確実に驚いていたようである。
でも向こうだって、わたしが誰かに似ていて驚いただけかもしれない。
あるいは昨日一瞬すれ違ったわたしに見覚えがあったとか。
片瀬さんは仕事が終わったのか、わたしとすれ違いに出て行った。
時間になりフロントに出ると、ベテランらしき40代くらいの女性がいた。
ぱきぱきと仕事をこなしそうな雰囲気だ。
やはり仕事が早い森さんに基本的な説明を受けた。
「主な仕事はロッカーキーをお客様に渡すことね。会員カードを預かって、機械に通してキーを渡す」
「はい」
森さんに手伝ってもらいながら実際に接客をした。そして暇な時間にはひたすらチラシ折。手を動かしつつ多少世間話をした。