記憶の中の彼
「おつかれさまです」
「おつかれさまです」
「片瀬さんは大学1年生なんですよね。森さんに伺いました。私も同じ学年なんです」
「はい」
返事はそっけなく、私をぬかして帰りたいのではないかということがなんとなく伝わってくる気がした。
「急いでいます?」
「あ、いや」
「家はどっちですか?」
わたしの問いかけに対し片瀬さんは駅の反対方向を指した。
「私もこっちです」
愛想はないが話しかければ答えてくれるようだ。
きっと悪い人ではないのだろう。
そう感じた私はめげずに並んで歩いた。
「私○○2丁目に住んでいます。片瀬さんお住まいはどちらですか?」
「ああ、同じ」
「え、○○2丁目ですか?」