記憶の中の彼
無事に封筒を受け取った片瀬さんはUターンしてこちらの横を通過した。
わたしはとっさに顔を下げたので、自分の靴が目に入った。
あら、スニーカーに汚れがある。
振り返ってはいないので確認はとれないが、出て行っただろう。
きっと気づかれていない、わたしはそう思っていた。
用事が済み、空腹であったため学校の近くにある定食屋チェーンで昼食をとることにした。
昼には少し早目の時間であるため、店内はすいていた。
運ばれてきた水をちびちびと飲みながら、思考をめぐらす。
自分は今混乱状態にある。まずは整理しよう。
先月出会った片瀬歩は陸にそっくりの容姿をしている。
しかし前提条件として陸はすでに亡くなっている。
片瀬さんは陸と名前も異なり完全に別人のはずである。
そして今日同じ大学に通っているらしいこと、本人から聞いた誕生日は嘘であることがわかった。