記憶の中の彼
しかも彼の本当の誕生日はわたしと陸と同じであったのだ。
そして帰宅をともにした際にわたしのことを「咲良」と呼び犬からかばった。
以上がわたしの知っていることである。
彼の行動や見た目がどうしても陸とかぶって見えてしまう。
しかし陸が生きているという可能性は限なくゼロに近いはずなのだ。
火事現場では子供の焼死体が発見されている。
DNA鑑定も行われているのだ。
すると彼はいったい何者なのだろう。
まさか陸の双子?
いや、陸には双子などいなかったはずだ。
あるいは誰かが陸に成りすましている?
ちょうど注文したサバ味噌定食が運ばれてきて、考えが一時中断した。
「お待たせいたしました。ごゆっくりどうぞ」
運んできた店員に軽く口角を上げて会釈を返した。