記憶の中の彼


「学校でも片瀬さんって呼ぶのはちょっとおかしくない?同じ学年なのに」

隆君はそう指摘した。

「バイト一緒だと癖でさんづけになってしまって」

「まあそうなるか」

「ねえ、昔から知り合いだったの?」

 隆君は何かを考えているような表情で尋ねた。

「いや、違う」

 無口だった片瀬さんが即座に否定する。

「僕はまだ誰と誰がとは言っていないけど」

隆君はにやりと口角を上げてわたしをちらっと見た。

片瀬さんは諦めたように隆君から目線をはずした。

「経済学部1年の斉藤美希です」

美希が仕切りなおすように片瀬さんに自己紹介した。
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