記憶の中の彼
「法学部1年の片瀬歩です」

片瀬さんも美希に向かって軽く会釈した。

「わたしと隆はサークルが一緒なの」

美希が私に説明した。

「へえ、バンドの?」

「うん、そう」

「僕と歩は高校から一緒の親友」

片瀬さんは興味がなさそうに黙っている。

「おい、反応しろよ。僕は親友だと思ってるんだけどね。歩は高校の時から人を寄せ付けないんだよね。全然なつかない野良犬みたいなやつだよ。咲良ちゃん、歩と一緒にバイト、やりにくいでしょう?」

「いや、一緒っていっても、わたしはフロントで片瀬さんはインストラクターなので」

「なるほど、場所が違うから関係ないってことね」

「いや、そういうわけではなくて」

少々困っているわたしを見てか、美希が話に入ってくれた。
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