記憶の中の彼


「私は小学4年生で転校したんだけど、そこで陸っていう男の子と仲良くなったの。陸とは誕生日が一緒だった。中学校でもクラスがずっと一緒だったの。でも中2の冬に陸の家が火事に遭ってね、家にいた陸と陸の両親は亡くなった」

「なんて言えばいいか分からないけれど、それはつらかったね」

底抜けに明るい隆君でもさすがに悲しそうな顔になってしまった。

ちょっと申し訳ないな。

「うん。それでね、まあ私は無事高校を卒業し、大学生になったわけなんだけど。今年の夏休みにショッピングセンターで、陸にそっくりの人とすれ違ったの。そのときは見間違いかもしれないと思った。その翌日はスポーツジムのアルバイトの初日だったの。そこで顔を合わせた人を見て本当に驚いた。ショッピングセンターで見かけた人だった。やっぱり陸に本当によく似ているの」

そこまで話すと、隆君はこれから私が言うことを悟ったように目で続きを促した。
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