記憶の中の彼
隆君の顔には戸惑いと好奇心が混ざったような表情が浮かんでいる。
「隆君、ありがとう」
「俺はなにもできてないよ」
「こんな話を真剣に聞いてくれて、うれしかったの」
「うん。どういたしまして」
くしゃっとした犬のような笑顔が素敵だ。
きっとこの人は男子女子問わずモテるにちがいないと思った。
「私は片瀬さんが陸でも陸でなくてもいいからただ事実を知りたいの」
「何か聞きたいことがあれば聞いてね。協力するよ。俺もすごく興味あるから」
「ありがとう」
駅で別れ際、隆君はこう言った。
「歩もさ、咲良ちゃんのこと気にしているように見えたんだよね」