記憶の中の彼
小さく開けたドアから私は見えていないはずだ。
「おい、昨日も来てただろう。もう入れないから」
「いいだろ、今日は用事があって」
あきらめたようにドアを開けた片瀬さんが隆君の隣に立つ私に気づいた。
「なんでこの人が」
「まあまあ」
隆君が私の肩を押してすばやく中に入った。
すると突然目の前が暗くなった。
あ、倒れる。
「咲良」とあわてた声が聞こえて抱きとめられた。
あれ、陸・・・?
ふわっと身体が浮き、目をうっすらと開けると目の前に片瀬さんの顔がある。
部屋に運んでくれ、優しくベッドに下ろされた。
「寝な」
そう言われそのままわたしは眠りについてしまった。