記憶の中の彼


ドアを押して帰ろうとしたそのとき、軽い足音をさせ片瀬さんが私の目の前までやって来た。

「明後日、来たら。実家から卒アル持ってくる」

突然のことにぽかーんと間抜けな面をしてしまう。

「じゃあ、お願いします」



初めての訪問から二日後、約束どおり片瀬さんの家を訪ねた。

「入れば。小学校の卒アルあるから」

縦長のテーブルの上にずっしりと重そうな卒業アルバムが置いてあった。

やはり私たちの学校とは違う。

テーブルの前に体操座りをし、表紙に手をかけてページをめくっていく。

片瀬さんも私の向かい側にあぐらをかいて座った。
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