記憶の中の彼
最近の片瀬さんは少し意地悪だ。

しかしそれは、優しくすることで何か不都合が発生するため、あえてそうしているようにも見える。

「こんなに暗いのは馴染みがないから」

彼は自分から聞いておきながら「ふーん」と無関心な返事をしたかと思うと、突然部屋の奥から丸い物体を取り出してきた。

「そういえば、いい物あった」

「これ何?」

「ほら」

彼が電源を入れると、輝く星が天井に広がった。

「プラネタリウム、初めて見た。こういうの好きなの?」

「悪い?」

不機嫌そうな声を出した彼は、どうやら少し照れたようだ。

「ううん、好きだよ。この辺り、そんなに星が出ていないから、こんなにたくさんの星を見られて楽しい」
< 63 / 69 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop