記憶の中の彼


「咲良ちゃんは、歩が陸君だったらいいなって思ったんだよね?陸君でないことがわかった歩には興味ない?」

彼は口角を上げているが、目には真っすぐな力が感じられた。

「え?」

つまるところ、隆君は片瀬さん自身に対してわたしがどういう考えを持っているかを知りたいのだ。

隆君に尋ねられたことの答えが自分でもよくわからずに、考え込んでしまう。

確かにはじめは陸にそっくりであることがきっかけとなり、片瀬さんを調べ始めた。

彼に陸を投影していた。

彼と接するようになってから、次第に彼のことを知りたいという欲求が出てきた。

それはやはり陸に重なる部分を見て、聞いて、感じたことにより、陸なのではないかという期待を高めたからであるかもしれない。

それならば、結局のところわたしの関心は陸にしか向いていないということになるのだろう。


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