記憶の中の彼


新学期初日、わたしが教室に入るなりクラス中が興味津々であった。
 
少し緊張しつつ、名前と出身地だけの短い自己紹介を終えた。

「では、遠藤さんはあそこの席ね」
 
先生が手で示す方向の先にある空席に着席した。
 
窓際の前から3番目。

男女別出席番号順であった。

「せっかくだからみんな自己紹介しようか。」

同じメンバーであるのにわたしに気をつかってくれたのか、単純に時間があったからなのかはわからないが先生が提案した。

席順に名前、趣味、誕生日などを言っていった。

一人終わるたびにぱちぱちと拍手が起こった。

わたしも皆に習ってもう一度自己紹介をした。
 
わたしのななめ前の男子の順番になった。
 
彼は普通の女子よりもずっとかわいいのではないかと思えるほどに、整った容姿をしていた。
 
長いまつ毛にきらきらとした瞳、形の良い唇。ふわふわとした髪は日に透けて茶色に見える。
 
そして全身にやわらかい雰囲気をまとっていた。

 
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