記憶の中の彼
「一之瀬陸です。9月20日生まれです。サッカーをやっています。」
わたしと同じ誕生日であることに少し驚いた。
実は陸の方もわたしの自己紹介を聞いたとき同じ誕生日というのが印象に残っていたそうだ。
休み時間になると前の席の女の子を中心に数名が私の席に集まった。
にこにこと明るく話しかけてくるクラスメイトにほっとしたことを覚えている。
その後、わたしは自然にクラスに馴染んでいくことができた。
陸とははじめあまり話さなかったが、目があったときに小さく笑いかけてくれた。
特に仲がいいわけでもないのに、クラスでポツンとしたときにさりげなく話しかけてくる優しさを持っていた。
見た目が良いだけではなく、勉強もスポーツも得意なうえに誰にでも優しい。
陸は皆の人気者だった。